色々な学びの場がある。9月21日夜、Bring Up Rugby Academyに中学生のバスケ選手が参加。ラグビーボールを声を掛け合いながらゴールへと運ぶ姿があった。集まったのは、聖光学院体育館を練習場に活動するバスケチーム「ブレッビーズ」の選手たち。ラグビーが得意とする伝える力を学び、コミュニケーション力を強化することが目的だ。
選手を3チームに分け、小野澤氏が決めたルールに沿って、ゲーム形式で行われる。相手へのタッチはNG、パスの回数や方向などは試合によって制限が変わる。その都度、どうすれば上手くボールを運び、得点できるかチーム内で話し合う。勝手が違う状況に戸惑いながら、バスケの選手たちもワイワイと楽しそうだ。
ゲームの合間に選手たちを集め、小野澤氏が問いかける。「このルールの中でパスをもらうにはどうすればいい?」「どんなパスなら相手が取りやすい?」。選手が「普通にパスする」と言うと「普通って?」と繰り返される。自分の普通が相手の思う普通と同じとは限らない。「相手の胸元へ、まっすぐ、ゆっくり」と「普通」、どちらが相手に伝わりやすいかは一目瞭然だ。
「今日のテーマは『話す』。まずは、ヘイ!しっかり!では相手に伝わらないことを知る所から。コミュニケーションは共通言語でないと成立しません。相手に合わせて変える必要もあります。どんなに通信手段が発達しても、どう伝えるかは人間の頭で考えること。そこを磨く気がないのは、伝える気がないのと同じです」と小野澤氏。
バスケもラグビーも、団体でボールを目的の場所に持っていく同じゴール型のスポーツ。状況に応じて、チームで作戦を考え、共有し、表現することで勝利に近づく。特にラグビーは、パスする味方は自分の後ろ、試合中に人数が減ることもあり、瞬時の高いコミュニケーション力が要求される。
「試合中には理不尽なことも起こります。ボールが滑る、暗くて見えない。選手が欠ける。その時に、みんなで『ああしよう、こうしよう』と話し合いをする。これは未来の話です。私は未来の話ができる子どもが育ってくれれば、スポーツでなくても良いと思っています」。普段の生活がスポーツ化することで明るい未来につながればと願っている。スポーツ間の交流については、「普段当たり前にやってることに対し、そうじゃないという学びもあっていい。バスケのステップは、ラグビーに活かせるかもしれません。また、親が決めた専門性に従うだけでなく、色々なスポーツを経験する中で、自分の専門性を追求できる環境があってもいいと思います。ニュージーランドのラグビー選手は、ボートもやるし、バスケもやります」。聖光学院を舞台に、新しい学びの世界が始まろうとしている。
ブレッビーズ 塩崎コーチ
「子どもたちがとても楽しそうで驚いています。普段は、もっと上手くなりたいと真剣な雰囲気の中で練習しているので、ワイワイ話しながら取り組む姿は新鮮です。バスケは自分の世界でプレーする子が多く、声出しが上手く出来ない。今日の経験は、選手同士のコミュニケーション向上の良いきっかけになります」
ブレッビーズ 牧野キャプテン
「ボールが違い、投げた方向に飛ばないし、取るのも難しい。タッチもダメ。いつもと違う状況で、頭と体を同時に動かすのが難しかったけど、チームメートとコミュニケーションしながら点を決めるのが楽しかった。普段の練習にも活かして、相手に伝える力をもっと磨いていきたい」